2017-07-02(Sun)

万事が益となる 2017年7月2日の礼拝メッセージ

万事が益となる
中山弘隆牧師

 それゆえ、主は恵みを与えようとして/あなたたちを待ち/それゆえ、主は憐れみを与えようとして/立ち上がられる。まことに、主は正義の神。なんと幸いなことか、すべて主を待ち望む人は。まことに、シオンの民、エルサレムに住む者よ/もはや泣くことはない。主はあなたの呼ぶ声に答えて/必ず恵みを与えられる。主がそれを聞いて、直ちに答えてくださる。わが主はあなたたちに/災いのパンと苦しみの水を与えられた。あなたを導かれる方は/もはや隠れておられることなく/あなたの目は常に/あなたを導かれる方を見る。あなたの耳は、背後から語られる言葉を聞く。「これが行くべき道だ、ここを歩け/右に行け、左に行け」と。
イザヤ書30章18~21節


 神を愛する者たち、つまり、御計画に従って召された者たちには、万事が益となるように共に働くということを、わたしたちは知っています。神は前もって知っておられた者たちを、御子の姿に似たものにしようとあらかじめ定められました。それは、御子が多くの兄弟の中で長子となられるためです。神はあらかじめ定められた者たちを召し出し、召し出した者たちを義とし、義とされた者たちに栄光をお与えになったのです。
ローマの信徒への手紙8章28~30節


(1)産みの苦しみ
 人は誰でも、健康で、生活が保障される安泰な人生を歩むことが幸福であると考えていますが、それは極めて非現実的な考え方です。必ずいつか困難な問題や状況に突き当たり、失望することになってしまいます。他方、予想していなかった困難や災いが自分の身に降りかかっても、絶望せず、苦難の先にある希望を見つめ、現在の苦しみを「産みの苦しみ」として受け取ることのでき人、そして困難に耐え、創造的な働きのできる人もいます。そのような人々は生まれながら優れた素質と能力を持っている少数の人たちです。
 しかし、そのような特殊な人ではなく、神の恵みに生かされる人は、誰でも人生を創造的に逞しく生きることができます。なぜならば、この世界と人間は皆、神によって創造された被造物であるという信仰の視点を立てばよいのです。そうすればイエス・キリストの救いの中で、「万物」は産みの苦しみをしていることが分かるのです。
 使徒パウロは本日の聖書の箇所であるローマの信徒への手紙でこのように言っています。
 「被造物がすべて今日まで、共にうめき、共に産みの苦しみを味わっていることを、わたしたちは知っています。」(ローマ8:22)
 人間は苦労の果てに皆死んでしまう。自分の利益を獲得するために、人と争い、力でその目的を達成しても、所詮すべては過ぎ去り、すべては滅びに至るという運命を思うとき、人は皆虚無に陥ります。確かにこの自己矛盾は今日の人間の深刻な問題です。神から離れた人間と世界が抱えている大きな自己矛盾と言えます。
 従って、今日最も深刻な問題は、日本が敗戦から70年を経て、経済的に発展し、米国との軍事同盟を強化して、世界の覇権を掌握しようと野心を燃やし、軍事大国になろうとしていることです。それを安倍政権は積極的な平和主義といっています。
 このような最近の傾向を見ますと、日本が明治以来始めた侵略戦争が近隣諸国の多くの人の生命と財産を奪い、また自国を破滅に至らせた道義的責任を少しも認識せず、また国家に破滅をもたらした戦争体験から何も学んでいないという点が、一番深刻な問題ではないでしょうか。同時に、世界と万民に通用する基本的人権、国家に対する国民の主権、諸国家の共存による平和の尊重、思想と結社の自由を保障している戦後の憲法を改正して、日本独特の理念に基づく憲法を造ろうとしていることです。そして国家の安全を守るために、何よりも同盟や軍備の拡張に頼っていることが、日本の将来に対する大きな危機であると言えます。
 なぜならば安全を守るために、武力に頼る国家は、必ず滅亡に至るからです。主イエスは「剣を取るものは、剣で滅びる。」(マタイ26:52)と仰せになっています。このことを今日の日本は真剣に考えなければなりません。それでもこのような危機的状況の中で、なお希望を与える道は、それを産みの苦しみとして見る視点です。パウロは先ほど引用しました聖書の箇所の一節前で言っています。
 「つまり、被造物も、いつか滅びへの隷属から解放されて、神の子たちの栄光に輝く自由にあずかれるからです。」(ローマ8:21)
 ここで神の子たちの栄光に輝く自由とは、人間と世界が陥っている虚無と滅びから解放され、人が共に生きる自由が与えられることです。人は誰でも主イエスを信じ、主イエスと結ばれることによって、神の恵みと主イエス・キリストの支配のもとにあるのです。その結果、神の命令を実行する自由が与えられています。さらにすべての人々は神の救いが完成する終わりの日に、「復活の主イエスの姿」に似る者へ「変貌する」と神様が約束して下さっています。
 それは正に神の救いが完成する永遠の国であり、そこではすべての人間が救われます。さらに人間だけでなく、被造物全体も神の恵みの輝きを反映する世界へと変貌します。これは何というスケールの大きい、遠大な視野に立った人生観、世界観でありましょうか。これこそ聖書が生きとし生ける者に与える人生に対する見方です。
 今や主イエス・キリストが支配される「神の国」は人類の歴史の中に突入しています。死人の中から復活された主イエス・キリストが人類の歴史の流れの方向を導いておられます。それゆえ、人類の歴史の中で起こる一切の事柄は「産みの苦しみである」とパウロは断言することができるのです。
 従って、わたしたちもパウロのように、今日の危機的な時代を産みの苦しみとして積極的に捕らえ、神が人間と国家に求められる本当の正義と人間の責任を明確にして、発言し、行動し、神の御前に生きる者となりますように、真剣に神に祈ることが必要です。
 
(2)クリスチャンの笑い
 次に、宗教改革者マルティン・ルターはクリスチャンが悪魔の攻撃を受けて、悪戦苦闘している最中でも、なお自由と快活さをもって明るく笑うことができると、言っています。それはクリスチャンが復活のキリストの代理人であるからだ、と言うのです。
 わたしたちは今なお闇の力に激しく襲われますが、それでもやっぱりキリストの最終的な勝利をわたしたちの態度と言葉で表すならば、そのことによってわたしたちは復活のキリストを証しているのだと、ルターは臆せず公言しています。
 要するに、クリスチャンはすでに地上で生活しながら、天上における最終的な勝利の先取りとして、今共に喜ぶことができる。従って、われわれは共に愛し合い、共に喜び、共に笑い、共に歌おうではないかと、ルターは言うのです。

(3)神に知られている人生
 次に、クリスチャンはこのようにキリストの最終的勝利を信じるならば、万事が益となると確信できます。使徒パウロはローマの信徒への手紙8章28節で次のように言っています。
 「神を愛する者たち、つまり、ご計画に従って召された者たちには、万事が益となるように共に働くということを、わたしたちは知っています。」(ローマ8:28)
 実に、これが自分の人生に対するクリスチャン特有の見方です。 しかし万事が益となるという意味は、決して万事が自分の思い通りになるというのではありません。「万事を益」としてくださる方はわたしたちの人生を究極目標に向かって導いておられる神様だけです。
 その神の目から見て、万事が益となるように働くのです。従って、神様は究極目標を達成するための方法と段階を決められました。この点について聖書は29、30節で語っています。
 「神は前もって知っておられた者たちを、御子の姿に似たものとしようとあらかじめ定められました。それは、御子が多くの兄弟たちの中で長子となられるためです。神はあらかじめ定められた者たちを召し出し、召し出した者たちを義とし、義とされた者たちに栄光をお与えになったのです。」(8:29~30)
 先ず神は「目標」を定められました。これは人間に対する神の永遠の目的です。すなわち、人間を「御子の姿に似た者」とすることです。もちろん、この目的は人間を愛する神の本質に基づく目的です。しかもそれは無償の愛によるものであり、神の絶対的な自由によって定められた目的です。これは真に有難い目的です。
 そのため、神は父・子・聖霊の交わりの中に永遠に存在しておられる「子なる神」を、「真の人間」としてこの世界に遣わしてくださいました。それゆえ、御子イエス・キリストは真の神であり、真の人間です。
 神は人間が主イエスにおいて、ご自身の性質に似る者にしようと欲し、計画し、目的実現の為に働いておられるのです。
 それゆえ、御子・イエスキリストの地上における生涯は、父なる神が御子イエスの中で働き、イエスの言葉と行動がそのままで神の言葉と行動となりました。つまり、神は御自身をイエスにおいて啓示されました。従ってわたしたち人間は御子イエスを見ることによって、神を見ることができるのです。さらに、イエスの生涯の頂点であり、その完成である十字架の犠牲の死は、「人類の罪の贖い」でありました。
 神様は人間を救うために、人類の罪をイエスに担わせ、人類に代わってイエスを裁かれました。裁きにおいて神の義が貫徹すること自体が人間の救いとなるためです。イエスはこの意味を完全に理解し、死の極みまで父なる神への従順を全うされました。
 その結果、わたしたちはイエスの中で、自分の罪とその束縛から解放されたのです。同時に、神はわたしたちのために、御前に生きる「新しい人間」をイエスの中に創造されました。これが「人間の救い」です。
 この「神の決定」と「新しい人間の創造」を、神は御子イエスを死人の中から復活させ、神の右に座らせ、天地万物の主権者とされたことによって、宣言されました。
 今や、復活の主イエス・キリストは救い主として、「教会の主」であり、「世界と人類の主」として働いておられます。人間を神の御子イエスに似た性質を持つ者とする神の目的は、今や主イエス・キリストの中で既に成就したのです。
 それゆえ、復活の主イエスは、すべての人を救いに与らせるために、人々を教会に集められるのです。次に、神はその計画表を示されました。
 先ず、第一段階は未だわたしたちが神を知らないでいるときに、神はわたしたちを呼び出してくださいます。
 それは教会の礼拝において、聖書が読まれ、祈りが献げられ、牧師が聖書の御言葉に基づき、聖霊の働きによって説教するとき、復活の主イエスが礼拝に参加している人たちの所に臨在し、出会っておられるのです。そして主イエスは礼拝をしている会衆に聖霊を与えられます。
 聖霊によって主イエスの命と自由を与えて下さいます。さらに聖霊の働きによって信仰が与えられるのです。ここで、神は信仰を通してわたしたちの罪を赦して、神との人格的な交わりに入れてくださいます。これは神との正しい関係に入れられることであり、「信仰義認」と呼ばれています。
 それに続く、第二段階は、クリスチャンが信仰義認に基づいて、教会に連なり、信仰生活を送り、段々と主イエスの性質を映し出す者へと変えられることです。この信仰生活を「聖化」と言います。
 それはわたしたちが御言葉を聞き、御言葉を実行しようと決意し、実行に着手するとき、不思議にも実行できるのです。確かに完全でなく、それでも部分的に実行できます。このことが聖化なのです。
 そのように御言葉を聞き、理解し、自分を主イエスに献げ、決断し、実行するすべての「信仰生活」が、「聖霊の働き」です。それが「聖化の過程」を歩むことです。
 しかし聖化はあくまでも部分的であり、未完成です。それにも拘らず、神の救いが完成する終わりの日に主イエスの性質に完全に似る者へと変貌するのです。この希望と確信も「聖霊の働き」です。
 従ってわたしたちには留意すべき点が二つあります。
 一つの点は主イエスに従うか、それともこの世の考え方や生き方に従うかの二者択一を、自分の人生の様々な状況の中で決断し、実行することです。これが第一点です。
 もう一つの点は、主イエスの歩まれた道は、「ただ一度限り」で繰り返すことのできない生涯です。それは「永遠の意味」を持っています。それゆえ神は主イエスの地上の歩みと十字架と復活を、人類の他の歴史の流れから切り離し、それを「神の言葉」にされました。それゆえ、主イエスの地上における一回限りの歩みは、今や常に生きて働く神の言葉となり、人を「生かす霊的現実」なのです。
 従いまして、主イエスに従う者は、地上での主イエスの御足の跡を見つめて、同時に復活の主に従うのです。
 なぜならば、「復活の主イエス」はクリスチャンが直面している現代の状況の中で、クリスチャンの中に働いておられるからです。従って、主の歩まれた足跡に従うとは、現代の環境に取り巻かれているクリスチャンの中で、働いておられる復活の主イエスに従うことに他なりません。



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