2017-02-19(Sun)

パウロの召命 2017年2月19日の礼拝メッセージ

パウロの召命
中山弘隆牧師

 まことに、主なる神はその定められたことを/僕なる預言者に示さずには/何事もなされない。獅子がほえる/誰が恐れずにいられよう。主なる神が語られる/誰が預言せずにいられようか。
アモス書3章7~8節


 さて、サウロはなおも主の弟子たちを脅迫し、殺そうと意気込んで、大祭司のところへ行き、ダマスコの諸会堂あての手紙を求めた。それは、この道に従う者を見つけ出したら、男女を問わず縛り上げ、エルサレムに連行するためであった。ところが、サウロが旅をしてダマスコに近づいたとき、突然、天からの光が彼の周りを照らした。サウロは地に倒れ、「サウル、サウル、なぜ、わたしを迫害するのか」と呼びかける声を聞いた。「主よ、あなたはどなたですか」と言うと、答えがあった。「わたしは、あなたが迫害しているイエスである。起きて町に入れ。そうすれば、あなたのなすべきことが知らされる。」同行していた人たちは、声は聞こえても、だれの姿も見えないので、ものも言えず立っていた。サウロは地面から起き上がって、目を開けたが、何も見えなかった。人々は彼の手を引いてダマスコに連れて行った。サウロは三日間、目が見えず、食べも飲みもしなかった。
使徒言行録9章1~9節


(1)福音理解におけるパウロの使命
 使徒パウロはキリスト教を世界宗教にする上で、使徒たちの中で一番大きな働きをしました。彼はパレルチナのアンティオキア教会から主イエス・キリストの福音を携えて、当時のローマ世界へ伝道し、小アジアと呼ばれている地中海沿岸の地域とギリシャにキリスト教会を数多く設立しました。そのため三回の伝道旅行をし、陸の旅、海の旅を繰り返し、言葉では言い尽くせない困難に遭遇し、それらに打ち勝って、福音を広めたのです。実にそれは彼の中に働く復活のキリストによるものです。言い換えれば、それは聖霊の働きでした。
 勿論パウロ一人でそのような大きな働きを達成したのではありません。多くの協力者が行く先々で与えられたからです。しかし彼自らが未知の世界に出かけていく覚悟でありましたから、伝道の過程で多くの協力者が出現するようになりました。
 クリスチャンにとっても、復活の主イエスがクリスチャンを導いておられるのですから、そのことを信じて、パウロのように未知の領域、未知の事柄に向かって行くことが重要なのです。それは冒険ですが、単なる冒険ではなく、主イエスが導いておられることを知っているからです。
 キリスト教は、世界の万民を救うという神の目的を実現するために、神ご自身が復活の主イエス・キリストを通して、働いておられる宗教です。 従いましてキリスト教は旧約聖書に示された人類に対する神の救いの約束の成就であると同時に、旧約聖書の限界を越えています。
 その際、どのように越えるかは、人間の考えや行動によるのではなく、神ご自身が復活の主イエスとその働きによって実現されたことに他なりません。またそれは神の救いの働きが福音の言葉として啓示されたことでもあります。
 そう言った意味で、キリスト教の最初の世紀は、世界的な教会の形成と新約聖書の諸文章、すなわち、使徒たちの手紙、そして福音書とが成立した一番重要な時期です。この中でパウロの果たした役割は非常に大きいと言えます。

(2)サウロの回心
 しかし、彼はペトロやヨハネのように最初から主イエスの弟子ではなく、生前のイエスとは何の面識もありませんでした。彼はローマ市民権をもったディアスポラと呼ばれる離散のユダヤ教徒の家に生まれ、律法を勉強するためにエルサレムに来て、当時有名な律法学者ラビ・ガマリエルに師事した新進気鋭の律法学者でした。単にそれだけでなく、ユダヤ教の正統性を確信する余り、キリスト教の撲滅を目標にして、クリスチャンを逮捕するため活躍していました。
 そのようなパウロが主イエス・キリストの弟子となり、福音の使徒となりましたのは、実に復活の主イエスが彼に現れ、彼をキリストの使徒として召されたからです。この経緯は、使徒言行録とパウロ自身が書いた手紙の中で明らかにされています。
 先ず、使徒言行録は次のように語っています。彼はキリスト教会に対する迫害の手を伸ばし、祭司長からの委任状を携えて、ダマスコにいるクリスチャンを逮捕しようとして、ダマスコへ向かう途上で、復活のキリスが現れました。
 「ところが、サウロが旅をしてダマスコに近づいた時、突然、天からの光が彼の周りを照らした。サウロは地に倒れ、『サウル、サウル、なぜ、わたしを迫害するのか』と呼びかける声を聞いた。『主よ、あなたはどなたですか』と言うと、答えがあった。『わたしは、あなたが迫害しているイエスである。起きて町に入れ。そうすれば、あなたのなすべきことが知らされる。』」(9:3~6)
 パウロという名前は、ラテン名です。パウロは生粋のユダヤ人でありますから、イスラエルの最初の王サウルの名に肖ってサウルと名付けられました。復活の主イエス・キリストはこのヘブル語の名前で、パウロにサウルと呼ばれたのです。このときイエス・キリストは全人類の救い主としての神の力と栄光をもって、パウロに現れられました。この輝きを見て、パウロは地に倒れました。それは聖なる神の御前に出た人間が抱く、大きな恐れを感じたためでありましょう。
 しかし、それだけではありません。その聖なる神が「なぜ、わたしを迫害するのか」とパウロに向かって仰せられたのです。
 彼は大いに戸惑いましたが、「主よ、あなたはどなたですか」と必死になってすぐ問い返しました。主の答えは、「わたしは、あなたが迫害しているイエスである。」との実に驚くべき内容でした。
 ここでパウロは完全に打ちのめされたのです。なぜなら、自分たちが信じ、仕えていた神は、ご自身を主イエスによって完全に現されたことをこの時、初めて知ったからです。こともあろうにパウロは神に仕える目的で、これまで神に反抗していたという事実を悟りました。その時、自分の罪深さを徹底的に知らされました。同時に、これほどまで自分たちを盲目的にしていているユダヤ教の教理の実践によっては救われないことを悟ったのです。
 ユダヤ教の教えの出発点はあくまでも旧約聖書で語られている神の言葉でありますが、それを解釈した律法学者たちの教えが幾世紀にも渡って伝承され、権威を持つようになりますと、いつの間にか、ユダヤ教の教理が神の意志に反する教えに変質していても誰も気が付かなかったのです。
 イエスが現れ、旧約聖書における神の言葉を正しく解釈され、しかも神に完全に従い、自ら神の言葉を実践されたことによって、ユダヤ教の偽善を暴露され、ユダヤ教の敬虔さを否定されました。
 これに対してユダヤ教の当局はイエスをユダヤ教にとって最大の危険人物であると判断して、イエスを十字架につけて殺してしまいした。
さらに、ここでユダヤ教の最大の盲点は、イエスは神ではないという先入観です。しかし、この先入観はある意味では正しいのです。なぜならば、世界の唯一の支配者である神は、人間やその他の被造物とは全く異なる存在であるからです。従いまして、ユダヤ人が待望していた神から遣わされる救い主、すなわちメシアは神の力を持って、この地上のすべての悪を滅ぼし、神の秩序を回復することによって、神の救いを達成する天的人物であると考えられていました。それでもメシアはあくまで人間であり、決して神ではないのです。メシアは言うなれば、理想的な人間の王でした。
 それに対して、神ご自身が人間となられて、この地上に来られた神の御子イエスは、ご自身が神の御子であることを自覚しておられました。そして父なる神から与えられた使命を果たすとき、常に神の側に立って語り、行動されました。このことを正統的ユダヤ教はイエスが人間の分際でありながら、自分を神と等しい者としていると判断し、イエスに対して、神を冒涜する最も大きな罪を犯す者として死刑の判決を下し、十字架につけてイエスを殺したのです。
 しかし、イエスこそ神の御子であり、人類の罪を神の御前に取り去るために、ご自身が人類の代表・代理として罪の刑罰を受け、十字架の死を全うされました。同時に神の御子イエスは十字架の死によってご自身を人類に与えられた神であることが、イエスの復活によって啓示されたのです。
 「わたしはあなたが迫害しているイエスである」という主イエスの御言葉を聞いて、パウロはイエスの敵対者、キリスト教撲滅運動の指揮者から、主イエス・キリストを信じる者、しかもキリストの使徒へと根本的に変化しました。
 実にこの根本的変化の原因は、神ご自身の決断・選びであり、実に罪人を御前に生かすために、罪人にご自身を与えられた神の無限の愛によるのです。
 実に、パウロの回心は神の啓示によって起こったのです。彼はガラテヤの信徒への手紙1:15~16で次のように言っています。
 「しかし、わたしを母の胎内にある時から選び分け、恵みによって召し出してくださった神が、御心のままに、御子をわたしに示して、その福音を異邦人に告げ知らせるようにされた。----」
 このことによって、パウロはキリストの福音を世界に告げ知らせる使徒としての召命を受けたのです。
 また、コリントの信徒への手紙二、4:6では次のように言っています。「『闇から光が輝き出よ』と命じられる神は、わたしたちの心の内に輝いて、イエス・キリストの御顔に輝く神の栄光を悟る光を与えてくださいました。」
 使徒言行録によると、パウロの周りに天から射した強烈な光が、彼の眼をしばらくの期間、見えなくしたのですが、同時にコリントの信徒への第二の手紙によれば、その光はパウロの心の中に輝き、福音の真理を知らせたのです。
 実に神の啓示により、パウロは復活の主イエスと出会い、福音の使徒として立てられました。

(3)福音の真理
 それではパウロが神から示された福音の内容は何でしょうか。
 第一に福音の内容はキリスト中心的であります。福音とは主イエス・キリストを通して、神ご自身が人間の問題を担い、キリストにおいて神の御前に生きる正しい人間を創造されたということです。この正しい人間の創造は、神の御子イエスの十字架の死と復活によって、主イエス・キリストの中で実現しました。それゆえ、使徒たちが宣教した福音の内容は、次の通りです。
 「最も大切なこととしてわたしがあなたがたに伝えたのは、わたしも受けたものです。すなわち、キリストが、聖書に書いてある通りわたしたちの罪のために死んだこと、葬られたこと、また、聖書に書いてあるとおり三日目に復活したことです。」(コリント一、15:3~4)
 さらに、使徒たちが復活のキリストと出会い、キリストを見て、キリストから使徒の務めに召されたことの証言が、福音の宣教と共にされています。
 次に、福音説教の締めくくりは、キリストに対する信仰とキリストの名による洗礼を受けることを勧めています。ペンテコステに説教をしました使徒ペテロは、次のように勧めました。
 「悔い改めなさい。めいめい、イエス・キリストの名によって洗礼を受け、罪を赦していただきなさい。そうすれば、賜物として聖霊を受けます。」(使徒言行録2:38)
 それゆえ、神の救いとは、人は誰でもキリストを信じることにより、神との人格的な交わりに入れられ、キリストの命を受けて、神の命令に聞き従い、それを実践し、神の御前に生きることです。
 しかも、それは決して人間の功績によるのでなく、ひたすら神の恵みによることであり、キリストを信じる信仰によってのみ可能です。
 第二は、人間に対する神の命令は、それを実行するときに、キリストの命がクリスチャンの中に働くので、クリスチャンはそれを実践して、神の御前で生きると言うのです。
 つまり、クリスチャンは神の命令を自分の力で実行することができるのでなく、キリストの命によって実行できるというのです。言い換えれば、実行することによって、キリストの命がクリスチャンの中に働くように神は定められたのです。
 第三に、人はクリスチャンになっても、罪を犯す罪人であるという深刻な現実があります。このことはわたしたちの罪深さを示しています。それにも拘らず、神は日々わたしたちに出会って下さいます。それはキリストの十字架の死による罪の贖いにより、神は常に罪の赦しをもって出会ってくださるからです。
 このことをクリスチャンは心から感謝するとき、生まれながらの自分の中に残存する諸々の悪、不義、偽り、愛の足りないこと、命令に十分に応答しない自己の怠慢を反省しつつ、キリストを仰ぎ、日々新たに、キリストに従い、キリストの命令を実行するのです。そのように日々新しく生きるのです。
 第四に、キリストの復活は、キリストの再臨の日に、クリスチャンが復活することの保証です。復活によって救いが完成する永遠の世界出現の確かさは、単なる知識ではなく、わたしたちがキリストによって、神の御前に日々生されているという体験と確信に繋がっています。
これは主キリストが今や神として働いておられる働きの確かさです。日々、わたしたちに出会われる主イエス・キリストの霊的現実です。



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